2人は幸せなキスをして終了?
2019年明けてすぐに土曜プレミアムで放送されていたHEROのことをふと思い出し、この記事を書いている。
私はこの映画が本当に大好きで、ツイッターを始めてからも2度ほど実況しつつ視聴したが、これが驚くことに、何度見ても、一人で見ても、みんなで見ても、いつでも面白い。
「キムタクは何してもキムタク」と言う人もいるが、なんと言われようとも久利生という男は格好いい。
●学校×年生のとき、イオン併設の映画館へ見に行き、友人とプロメッサノミセパラーレと何度も何度も暗唱した。(ステラス、キルクルス、ルーメン、スタビレム!)
松たか子演じる雨宮は、お堅く、真面目が服を着て歩いているようだが、それを久利生が愛しく思うのもなんとなくわかってしまう。
最後のキスは、唐突なようでいて、ドラマシリーズから追ってきた2人の関係性がついに実を結んだ「当然」の瞬間であった。
(キスで映像が止められてしまうのは、親と見ていた青少年には少々キツイものがあったかもしれないが。)
そう、当然の瞬間だった。
そして、長らく動かなかった2人の時計の針が再び動き出す瞬間でもあった。
おそらく、しばらくは順調に時を刻んでいたはずだ。
まさか、再び針が動きを止めるとは誰も思っていなかった。
まさかまさか、キスをしておいて、続編で結婚していないとは思っていなかった。
続編第1話で、久利生の左手の薬指に必死で指輪の面影を探した。
おいおい小道具さんミスだぞ、まさかあんなキスをしておいて結婚しなかったなんてそんなことあるはず…。
(最終的に13年も経過させる必要はなかったやろ…。)
(「見てないうちに結婚して子供こさえてた」としても文句は言わなかっ…いやその場合「経過見せろや」って言うな…。)
俺はちゃお生まれ別マ育ち
キスしたやつは大体入籍…は言い過ぎかもしれないかもしれないが、誰にも文句は言わせない。(ここで唇でお前の口を塞ぐ)
好きになっちゃったから結婚するモン♡なんて漫画ばかり読んで育ったら憲法で定められていると勘違いするだろう。
今からする話は大体HEROかケイゾクの話だと思っていただいて構わない。
もういい大人だから、本当はわかっている。
大人同士のキスに法的拘束力はない。
将来を約束できる魔法でもない。
キスしても別れるし、結婚しても別れる。こともある。
高校で「あの2人結婚しそうだよね」と噂した2人はお互い地元の大学に進学してもバイトやサークルですれ違って別れるし、遠距離になっても別れる。
彼氏がわざわざベランダに出て聞こえないように取った電話は記念日サプライズプレゼントを注文したジュエリーショップからの「ご用意できました」の電話ではなく、サークルのかわいい後輩からの「今お話したいなあ」の電話だし、
街で彼氏と女友達が雑貨屋にいたのは恋人へのプレゼントを一緒に選んでもらっていたのではなく普通に浮気デートだ。
悲しいくらいの醜い現実が世の中には転がっていて、綺麗事を集めただけの少女漫画では太刀打ちできない。
キスした2人が、そのまま結婚するとは限らない。
大人だからそんなに甘くないのはわかっている。
でも、フィクションでまで、キスのその後を現実準拠ばかりにしなくても良いのではないか。
ノンフィクションならまだしも、である。
現実では、キスしたって結婚しない。両家顔合わせが終わった後に職場不倫が判明することだってあるし、結婚式後入籍前に隠し子が判明してご祝儀を返還することだってあるだろう。
ドラマや漫画でも、2人の愛が眩しいと思う反面、「でも多分この2人は2人でいることを選ばないだろう」とわかってしまうことも沢山ある。
(2人とも夢を優先するだろうとか、2人でいるのは楽しいけれど現実を忘れ続けていてはいけない状況だとか、理由は様々。)
そんなことはわかった上で言っている。
私は、ドラマや漫画では、「意味のある」「想いが通った」キスをしたら、その2人には結婚してほしい。その方が、嬉しい。
※別れがしっくりくるエピソードがあれば、もちろんその限りではない。
※また、当て馬からの最後っ屁のキスなども例外である。
※HEROのような、「思いが高まった末の、その形としてのキス」の話をしている。つまりHEROの話である。
※むやみに主語を大きくして申し訳ないが、ほぼほぼHEROへの文句である。
これは幸せの象徴のキスだったと証明してほしい。
2人は、このキスをした日のことを忘れずに、2人で幸せになることを選んだんだと思わせてほしい。
私が見てきた2人のドラマは、2人の軌跡は、私がテレビの前で観察したままの情緒をともなっていたんだと思わせてほしい。
ドラマでも漫画でも、私が目撃した以上の事態が見えないところで起きていたこと、それが別れに至らせるほどのものだったこと、2人はそれを乗り越えられなかったことを突きつけられた気持ちになる。
以下、ただの文句。
おう久利生お前これはどういう体たらくじゃコラ…。イ・ビョンホンに土下座しろや…。
真山コラどういうことやお前…信じない!この目で見るまで!(クラピカ)
キスしたんだからお前らが幸せにすべきだったんじゃないのか…。
確かにお前らがキスした女は自分で幸せを掴める女だろう…だがしかし。お前らと幸せになるところが見たかったんだよ…わかるか?
そしてなぜ、キスしたのになぜか結婚しなかった奴らがいる一方で、どうでもいい(主観)ドラマばかり後日談が充実している?
私は別にお前らについてはそんなに関心がなかったのだが…。サブキャラ同士で急にくっついて萌える奴いるか?いるな。知ってるわ。そういう奴いる。
個人的には「経緯がねえ!論拠がねえ!唐突感が拭えねえ!大団円!必要ねえ!」俺らこんなドラマ嫌だ〜という感情だ。
「見えざる…はずの神の手が見えまくる終わり方だったなあ」という感想を抱かざるを得ない終わり方だと、本当に数年後に残るのがその「作り手が見えてしまった」ことへのがっかりした記憶ばかりになってしまう。
自分で虚構準拠の恋愛がしたいわけではない
満員電車で通勤、仕事優先の恋人、家事をしない夫、マウンティングのひどい友人、うるさい両親…。
現実では夢を見ていられないこともある。
自分の周りの現実は、変えようとしても変えられないことの方が多い。
そういうときは、自分の気の持ちようを変えるほかない。
環境に対して「変わって!」と願ってもうまくいかない。自分が変わるしかない。
そうせざるを得ないとき、ドラマや漫画を逃げ場にしたいことだってある。
ままならない現実から目を背けたとき、虚構で夢を見ていたいときだってある。
娯楽さえないとき、ままならない現実のことを考えずにいられない人もいるだろう。
私はそうだ。歩いていても、お風呂を掃除していても、考えることをやめられない。向き合いたくない時間もあるのに、思い出さざるを得ないくらい大きな出来事だってある。
大人になって、そう感じるのに、どうして大人のための漫画は現実を見せつけてくるものが多いのだろうか。
大人になるにつれ、極端に現実的(セックスまでしたけど仕事を優先して別れる等)、極端に非現実的(蹴り飛ばした石油王が喪女でお茶汲みだけが仕事の私に一目惚れ等)のどちらかが「読むべきもの」として増えてゆく気がしている。
「大人女性向け」として用意されているものを読む必要はないし、その中でももちろん上記に当てはまらないものもたくさんあるが、「大人女性向け」と銘打たれたものに、「女子向け」よりも上記のようなものが多いと感じる。
本当は、大人の心にこそ別冊マーガレットやLaLaが必要なのではないか。
自分の気分を変えるしかない…そうだ!シャブだ!のノリで大人だって少女漫画を読みたい。多分。
好きという気持ちは永遠ではないのか?
風早くんも、お茶碗を流しに下げただけで家事しましたみたいな顔をするようになるのか?
そんな作品を読んで、「現実でも見る」だとか、「そうだよねこんなもんだよね」だとか考えることが唯一の正解なのか?
あの、24時間テレビのような現実離れした恋愛の奇跡の連続を、
もう自分たちには訪れないとわかっているからこそ、読みたいと、見たいと思ったっていいんじゃないか。
時には、フィクションを自分に都合よく利用して、自分に都合よく消費してもいいだろう。
あの浮遊感が、現実とは別枠で用意されていてほしい。
漫画やドラマの中で虚構を味わって、明日の通勤の勇気にしたい。
家でフィクションが待っているから、満員電車を我慢できる。
どうして、漫画でまで、ドラマでまで、自分の身の回りで起きそうな事態に心を痛めなければならないのか。
キスしたなら結婚してほしい。
一つの部屋で2人きりで過ごしたなら他の人と付き合わないでほしい。
そもそも、キスをしたなら、成人男性は責任を取るべきだ。※キスでは子供はできない。
大人は、漫画やドラマの展開に、非現実的な要求をしてはいけない?
「リアルでいいわ〜」と面白がることができるフィクションとは別で、「こんなのありえないけどいいわ〜」と思えるフィクションが、私はもっと読みたい。
それは、決して子供向けではなく、もうそんな恋愛をする可能性がないような、制服ディズニーさえ無理があるような、毎日「会社行きたくない」とつぶやいているような私のような人間向けにも。
CookieにもKissにも、癒しを求めて読んでいい。いい年した大人だっていい。
別マもなかよしも、何歳まで読んだっていい。
シャブだよ。これはシャブ。
シャブにする権利は誰にでもある。
「安定した職業に就いた男と結婚しておいて、刺激がないと文句を言って、刺激的な男に抱かれるも、こんなもんか…ってなるのがリアルでいいわ〜」と思える漫画も好きだけれど、自分の状況が似ていたらこんなもの読んでも余計に虚無感を味わうだけだ。
浮気した男に縋り付いて「別れたくない!」と叫ぶ女が主人公のギャグ漫画は面白いが、自分の恋人の浮気が発覚したときにそんなもの読んだら「なんでわざわざ漫画でまでズタズタに傷つけられなければならんのじゃ!」と思うだろう。
それは虚構準拠の恋愛ドラマやエロ漫画でも同じことで、現実的なフィクションも非現実的なフィクションも自分の状況に応じて好きなものを選べば良い。
自分を傷つけたり現実に向き合わせたりする作品をわざわざ選ぶ必要はない。
逆に、現実の解決策を探すために自分の状況に似た作品を選ぶのも自由だ。
大人よ
好きなだけじゃ幸せになれないとか言うなよ。
恋心で世界回してみせてくれよ。
好きなだけでいいじゃないか。しがらみって何だよ…いやわかるけども。
ママとパパは駆け落ち!って設定もたまにあるじゃん。
足が速い男子、格好いいじゃん。
ドッジボールで自分に当たりそうだった球をキャッチした男子のことを安易に好きになろうぜ…みんな!
結び
子供の頃見た、不機嫌なジーン。
今はもう「エンディングに納得できなかったこと」しか覚えていないが、今見ればもしかすると納得できるのかもしれない。
もしかすると納得できないかもしれない。大人になっても、わからないかもしれない。
でも、納得する必要はないと、この記事を書いていて思った。
ただの余談(6/30追記)
お相手が喪女だと案外キスした後上手くいきやすいと思っている。
なぜなら、「喪女」がキスをしている時点で、「喪女(が靡かなくてイケメンに見初められたり綺麗になってイケメンに見初められたりイケメンにアプローチするために綺麗になったりする)シンデレラストーリー」ということも多いからである。(当社比)
6/30
この記事は、フジテレビのドラマ「HERO」やTBSのドラマ「ケイゾク」を知っている前提で書いている。
しかし、「HERO見たことないです」「ケイゾク聞いたことないです」と成人ホヤホヤのフォロワーに言われ、傷ついた。キムタクだよ!?松たか子だよ!?渡部篤郎だよ!?中谷美紀だよ!?
以下、Amazonのページにつながる。
買う必要はないが、こういう名作があったことは、知っておいてほしい。
- HERO
フジテレビのため、おそらくAmazonプライムで配信されることはない。FODならありえる。
1期(ヒロイン松たか子)、1期映画(ヒロイン松たか子)、2期(ヒロイン北川景子)、2期映画(ヒロイン北川景子、松たか子も出演)
TBSのため、まれにAmazonプライムで配信している。