つちや(仮)

大体当クールドラマ感想。たまに漫画、たまに旅、たまに雑談。

凪のお暇第1話感想〜生身の生きづらさ5割増し〜

主観による評価

★★★★☆

 

プラスポイント

  • (原作の慎二とゴンさんに合っているとは思わないけれど)「外面のいいモラハラ男」「掴めなくて追いかけてしまう男」に高橋一生中村倫也がぴったり。外見や年齢のイメージではなく演技の無理のなさを優先したんだなとよくわかる
  • 「生身の人間の映像」にするにあたって無理がなくなるような補足が丁寧にされている
  • 黒木華の声が可愛いのでナレーションが良い

マイナスポイント

  • エッセイ風の絵柄でなんとなくマイルドになっていた生きづらさがガチの生きづらさになる
  • ↑ゴンさんにハマってからのことを想像するだけで胸が苦しい

 

久々に、原作がっつりリアタイで追いかけている作品の実写化。

私自身は実写化反対人間ではない。「アニメ最高なのになんで実写化するの」「実写化して成功したことなんかない」「声優が実写化も担当してほしい」「原作が汚される」といった言葉には割と呆れている。

でもキャストが発表されたとき、さすがに「年齢が行き過ぎでは?」と思った。

でも、見てみたら納得した。実写化するにあたって、慎二とゴンさんを再現することより、二人の役割を果たすことを優先したんだと思った。

 

高橋一生ファンの人には申し訳ない(高橋一生のことは好きです。念のため。)けれど、外(自分と恋人、あと親とか除く)に見せる笑顔の嘘っぽさ、笑っているのに笑っていない目、なんとなく追い詰められるような声色、「この人モラハラ役を演じるために生まれてきたのでは?」と思うくらいすごかった。そして最後の泣き方のギャップ。

モラハラの若造役、あの絵柄でマイルドになっているだけだから、ドラマにするなら可愛げのある男の人じゃないとキツすぎない?現実的すぎない?と思っていたけれど、本当は愛しているのに表現が下手なだけなんだ…などという自分勝手な人間であることに変わりはないため、例えば菅田将暉などが演じていたら「かわいい!愛情表現下手なだけなんだね…頑張って!」となってしまいそうなところを「いや本当は好きなのはわかったけれど大の大人が不器用を盾にするな」と思わせてくれる。慎二に厳しい目を向けるためにあの年齢の俳優が演じることになって逆に良かったのかもしれない。

中高生向けの少女漫画だと、ツンデレ男子も「くそっ、素直になれねえだけなんだよ…」と影で言っていれば許されるけれど、これはそういう物語ではない。大人は言葉で伝えなければ伝わらない。本当は愛しているとか知らんがな。言えや。「いい年した俳優」ではないと大目に見てしまっていたかもしれない。実写なら尚更。

あと、これは本筋には全く関係がないのだけれど、冒頭の「空気」の説明音声。驚いた。高橋一生ってこんなに喋りうまかったの?

いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう」「カルテット」「僕らは奇跡でできている」など見ていたが、根暗で自分の内側に語りかけるような喋り方の人だなと思っていた。

でも、第1話の冒頭の説明や、慎二の喋り方、ラストの泣き方で、うわっこの人役によって喋り方変えてるだけなんだ…と思った。めちゃくちゃびっくりした。私が見てきた役がたまたまそうだったんだろう。そういえば天沢聖司やっていた。

「この人ボソボソ喋る人だな…」を喋るスピードと声の小ささ以外で表現できるってなに?怖くない?演技の鬼なんだなと思った。

結論、恐ろしいから高橋一生で良かった。以上!

 

そして中村倫也D-roomの方かと思ったらマア君の方だった。

ゴンさんって要するに、「ほんわかしていてハマって抜け出せなさそうな人ではない、むしろそんなに恋愛対象にはならず友達止まりになりそう」な見た目してると思うんだけど、中村倫也だと最初からバリバリに好きになっちゃいそうだし好きになったら掴み所がなくて自分ばかり追いかけてしまいそうなんだよね。

見た目は漫画のゴンさんに似ていなくても、言葉では確かに好きと言ってくれているのに全然信用できない顔してる。だからぴったりなんだろう。

 

全体的には、本当に「エッセイ風の絵柄のおかげでマイルドだった描写が本当に現実での生きづらさに化ける」のがしんどかった。でも面白かったし、原作に忠実というよりは原作を大切にしているんだなと思った。

↑このあたりの、一瞬思考する「間」が恐ろしかった。わかる。現実で変換されるとこうなるんだ。苦しい。SNSのチェックの動きも、推理の流れもわかる。苦しい。

 

あと、とてもテンポが良くて見やすい。

例えばボイスだといつまでも気づかない水の音とキラキラが何度も見せられたり、HEAVEN?だとしつこく顔が飛び出したりする。そういった「もういいよ」がない。描写の過不足がない。ドラマのテンポの良さってこういうところで生まれるんだなと思った。

 

 

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