つちや(仮)

大体当クールドラマ感想。たまに漫画、たまに旅、たまに雑談。

監察医朝顔第11話(最終話)感想〜ラジハで味をしめたか〜

主観による評価

ストーリー ★★★★★

フジテレビ ★☆☆☆☆(馴れ初めを描くことは評価)

 

いい最終回だった!

大じぃじと光子の涙、歩き出せた朝顔に泣いた。

そして1話からの積み重ねを確かに感じる構成が見事だった。災害で心に傷を負った朝顔が、執刀できない苦しみに苛まれてもそれを乗り越え、災害の現場で今度は解剖医として悲しみに立ち向かう。

解剖医の話であり、災害に苦しみ災害と向かい合いその悲しみを携えて生きていく話でもあった。

最後まで細かいところにも手を抜かないでくれてありがとう。いいドラマだった。

 

褒めるところばかりで、マイナスポイントはストーリーではなく制作側のやり方だけだから、まず評価をマイナスした点だけ簡潔に。

  • 次回予告で「悲劇」などと煽っておいて早々に桑原の安否確認➡︎最終話の視聴率を上げるために誇張表現をした(視聴率を高めることが悪いということは全くない。姿勢くらいは隠せと言っている。)

    ストーリーに集中したい視聴者に「もう桑原くん死なないよね?」ってハラハラさせて楽しいか?そういうドラマじゃないよねと思いながらエンディングまで見るの、ちょっと嫌だった。

  • ラジエーションハウスで先週までドラマを見ていた視聴者をバカにしていると散々書かれていたのに、(番外編だと期待して見た人が多く)視聴率が高かったためか同じ手法をとる(新しいシーン+総集編)(やるなとは言わんがちょっとした新シーンで釣って2時間分の視聴率荒稼ぎするな。そんなんだからフジテレビは信用を失うんだ。)(ラジハ特別編感想記事)

ただ、2つ目については、「あなたの番です」も黒幕の動機解明をこのスタイルにすれば良かったのでは…と思う(笑)

 

マイナスポイントはこれくらいにしておいて。

全体的なストーリーの完成度は本当に高かったと思う。素人の感覚だけど。

 

描いているものはあまりにも地味だ。

世界を巻き込む事件もない。殺人かと思いきや自殺。朝顔は犯人確保の場まで出しゃばることはない。協力はしても越権は基本的にしない。死因がどうしてもわからないこともある。

でも、私のような、解剖の世界とは無縁な人間に、無縁ではないと思わせるような重みがあった。

最終回でその役割を担っていたのは桑原くんだった。

遺体安置所に「並べられた」遺体。この中の一つだったかもしれない。

その人たちがたまたま亡くなった側にいたように、自分が生き残った側にいたのも偶然。

「今生きていることは奇跡なんだから、感謝しないと」「家族とも明日お別れになる可能性があるんだから、悔いのないように謝っておこう」といつも心がけるのは難しいけど、せめて何かあったときに遺された人たちが困らないようにするのは必要なことだなと思った。遺書書こうかな。

 

また、地味でも、視聴者の知らない「解剖医の世界」をかなり丁寧に紹介していたと思う。

有毒ガスが発生したときの対処もそうだが、特に最終回の遺体安置所の設置は本当に興味深かった。

私にとっては遺体安置所は「そこにあるもの」で、「あるもの」も誰かが手を動かして作ったものだという視点が欠けていたことに気付かされた。

生きている被災者への配慮、導線の確保、あらゆることを考えて設置されていた。(そして、法医や歯科医へのケアまで手厚い。)

考えみれば電柱も塗り直された横断歩道も何もかも人手によるもののはずだが、こうやってわざわざドラマのワンシーンとして時間を割いて「取り上げないと見えない部分」を描写した意味はかなり大きいなと思う。

特に、医療ものはドラマティックで派手で、手術シーンや医者同士の揉め事がメインで描かれることが多いから。

派手な部分より、堅実な部分を優先した。すごいと思う。民放のドラマなのに。(そう考えると前クールのラジエーションハウスは派手だった。)

 

そして家族の描写もとてもとても平凡だ。

朝のこだわりのジャムがなくてチーズトーストに心が躍らない子供、ママとパパがいなくて食べたくない子供、誰かが麦茶を継ぎ足して、カレーは作れば何日分かのストックになる。

ドラマを見る誰もが、どこかで見たことあるような、自分でもやったことがあるような家族。

どんなドラマでも描けそうに思うけれど、意外とない。

どうしてもママばかり家事をしていたり「ママ早くやってよ」とパパに言われたり「麦茶ないよ」とじぃじに甘えられたりといった、もやっとする部分があるのだが(もしくは発言はないが他の人が準備するシーンもない)、桑原くんも平さんも朝顔も全員家事能力があり、誰かがつぐみを見ていれば誰かが動き、誰かが疲れていれば誰かが大目に担う。

当然できた方がいいはずなのに誰もが当然できるわけではない協力が目に見えてそこにあったから、余計な部分で「いやお前がやれよ」と思うなどのストレスを抱く必要がなかった。理想の家庭だった。

毎回食事シーンが入っていたの、本当に良かった。

しかも、別につぐみの言葉で事件解決のひらめきが得られる、みたいな重要なシーンじゃなく、ある意味無くても事件解決にも死因解明にも全く影響がない要素を毎回丁寧に丁寧に入れていたって、すごい。

 

そして、最後のメッセージも心に響いた。

愛する人を亡くした悲しみは、忘れたように見えていつも心の中にあって、ふとした瞬間に「そういえばあの人はもういなかったんだ」と思い出す。

東日本大震災から8年。

愛知県で見る報道は減った。東北出身の人は普通に仕事をしていて、結婚していて、あの震災は過去のことだったんだと一見思える。この人は忘れて前を向いているんだろうなどと。

でも違っていて、他人には見せない部分もあるだろうし、平気そうに見えるその人の中にも悲しみの波が寄せる瞬間があるんだろう。

そのことに気付かされた。

悲しみは寄せては返すさざ波のようと言っている人を見て、穏やかでつぐみを可愛がる大じぃじと娘がいないことを悲しむ大じぃじは、どちらも本音なんだろうと思った。

普段我慢しているわけではなく、ただ時々ふと悲しみが押し寄せる。

傷が癒えることは永遠になくて、忘れることも永遠にない。

それでも残された人たちはどうしても明日のために生きなければならない。

何に気づいたところで失った命は元には戻らないことを痛感させられたドラマでもあった。

前回、さぶちゃんが無罪になって思ったことを、泣いた光子を見て、もう一度思い出した。

 

 

まだまだ、細かく書きたいことがたくさんあるから、箇条書きで。

  • やはり土に埋もれてもジャニーズは死なない(コードブルーの山Pももそっと起き上がった)。

 

  • つぐみ役の子役っぽくなさが本当に良かった。棒読みじゃなくて本当にそこに「桑原くんと朝顔の子供」がいた。自然で、無邪気で、演技していないかのような自由なセリフと動き。

 

 

  • 役だけじゃなく、キャラ設定も良い。優しいパパと優しいママと優しいじいじと暮らしているからといって聞き分けのいい良い子ではない。ママもパパもいないからと朝ごはんを食べなかったり(電話ですぐに機嫌を直したり)保育園の準備前に走り回ったり。本当に本当に普通の子の設定なのが新鮮で、そして視聴者に「どこかで見た子供だ」という親近感を抱かせた。

 

  • 朝ごはんを食べようとしないつぐみに、じぃじが「じぃじが食べちゃうぞ〜」って言うの、あまりにもあまりにも見たことがある光景で笑った。「やだ!食べないで!私が食べるの!」を期待してあんな冗談言ったのに反応されないと調子狂っちゃうんだよね。

 

  • 大じぃじ号泣シーン直後、平さんと朝顔が見晴らしのいい丘に行ってしまったけど、桑原くんとつぐみを泣き腫らした大じぃじのところに放置しないで…と思った(笑)気まずい空間…。

 

  • 最後まで理想が服着て歩いてるような夫だった。

 

  • みつこどこいくんだろう?と思ったら椅子持ってきたので細かいなあと思った。現実でああいう場面があったらやはり誰かが椅子を持ってくる指示を出すだろう。

 

  • 志田未来中尾明慶がとても良かった。思い返してみると、「二人の成長をメインに取り扱う回」は一度もなかったのに、二人とも回を追うごとに成長していることがわかるつくりになっていたの、すごいな。二人とも画面の隅で、朝顔の葛藤の近くで少しずつ変化していったことが行動や発言から伺えた。光子が解剖医を選んだことも、さぶちゃんの無罪のために頑張ったことも、最終回で泣いたことも違和感がなくて、そういえばメインじゃないけどちゃんと丁寧に描写が差し込まれていたんだなと思った。

 

 

 

 

 

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