つちや(仮)

大体当クールドラマ感想。たまに漫画、たまに旅、たまに雑談。

ルパンの娘第11話(最終話)感想〜「見ないでください!」のダブルミーニング〜

主観による評価

★★★★☆

 

正体バレが中間にあり、そこから「結ばれない二人」の悲しみを中心に動いていたため、悲恋ドラマのようなシリアスドラマのような気になっていたがそもそもこれはおバカなコメディドラマであることを思い出させてくれる最終回だった。

ドラマの最終回として見るのであれば、非現実的で物理的法則を考えていない脱出方法や、死んだ人間と生きていくことの現実的難しさ(子供が生まれた場合に訪れる障害や怪我をした時に保険がきかないことなど)が気になるところだろう。

でも、これは、他でもない「ルパンの娘」の最終回である。

ついていけない量のオマージュ、ミュージカルを始めてしまう泥棒、外に出られず合成音声ソフトで話す泥棒、やたらと演技が大げさな泥棒、五七五でしか己を表現できない警察、その時点で十分非現実的なのに、終わり方にどんな現実を求めるというのだろう。

独自の世界が、現実の世界に絶対に屈しなかった。終わり方だけ普通のドラマになることなど絶対にしなかった。どうせなんだかんだみんな幸せになるだろうという安心感もある。

この、アホなコメディドラマの、深く考えたら負けな「ルパンの娘」の最終回としては、満点だったと思う。

笑って泣けて、本当に楽しめた。ありがとう。

来期からミュージカルのないドラマを見るしかないのが苦しすぎる。円城寺…出てくれない?無理?

 

 

 

同じ言葉・同じ行動

毎話ミュージカルを巧みに挿入することで、視聴者の中にある、突然歌い出すことの意味を麻痺させ、最終話でそれを持ち味として戦うことに導いたように、このドラマは、描写する行動や言葉に意味があり、それを一つ一つ、後から効果を発揮できるように丁寧に描いてきたように思う。

アホドラマに見えて、おばあちゃんが華とかずくんの恋を特別応援していること(そしてその場では深く追求させなかったこと)も、その場ではなんとなくで済ませられたのが、後から意味があったとわかった。

あれ伏線なんじゃない?と視聴者がいつまでも引きずるような意味深さがなく、何気ない描写で、いつのまにか忘れてしまうような軽やかさを散りばめていた。

行動や言葉の反復によって、継続して見てきた視聴者に、単発では与えられない楽しさを提供していた。

 

最終回でそれを感じたのは、エミリの「見ないでください!」という口癖と、仮面を再び外したかずくんのシーン。

 

エミリの「見ないでください」は、最終話だけ違う意味を持った。

元々エミリに「見られたくない」設定がなく、「泣いているから見ないでください」と最終話で出てくるだけでは視聴者に響くものが全く違う。

あなたを想って涙を流しているので見ないでください、あなたを裏切った女の顔など見ないでください、どうせ薄情な私ではない人のところへ行くなら見ないでください…色々な想いを振り切りたいから見ないで欲しいという切なる願いのこもった「見ないでください」になっていた。ある意味では、「見てください」と同義だったとも思う。

一言一句変わらないのに、シチュエーションが違うだけで意味が変わる。こんなセリフになるなど誰も考えていなかっただろう。

(今までは言われればすぐ顔を背けていたかずくんが最後だけ「見た」のはせめてもの誠意だろう。)

 

かずくんが華の仮面を外すシーンも、一度目とは違う意味を持っていた。

一度目は運命から目をそらすため。二度目は運命から逃げないため。

華であって欲しくないという祈りを込めた一度目は、華と自分の運命を受け入れる覚悟が足りなかった。華であって欲しくないと願っていたから。この泥棒が華でもその運命を受け止めようとは思えていなかった。

でも、一度華を失ったかずくんが外した二度目の仮面は、この仮面の奥にいるのが華だからこそ、その運命ごと受け入れようという覚悟をもって外された。

一度目は悲しいシーンだった。かずくんがずっと隠されていたことに気づいてしまう。きっとそれを知ったら華はかずくんを失うだろうとみんなわかっていた。

でも二度目は違う。正体を知っているかずくんがわざわざ仮面を外す必要はない。外すなら、つまり、その仮面をつけた華を、その仮面の奥にいるのが華であることを自分は受け入れるということを、華に伝えるためだから。

あんなに悲しいシーンがしあわせなシーンに変わった。

キスをする二人が、かずくんは結婚式の装いで、華が泥棒の装いとちぐはぐなのも、二人の運命の過酷さを物語る。それでもその姿でキスをすることが、乗り越えるという覚悟を表していた。

(キスが長いのも良かったな…。)

 

ただのアホドラマに見えて、本当に緻密に練られて作られていたんだなと思う。多分、一度目に仮面を外すとき、すでに最終話でもう一度仮面を外すことを考えていたんだろう。

最終話まで合わせて、一つの美しい流れを持つドラマだった。

 

 

 

いろいろ感想

  • 結局、ルパンの娘は運命を神様から盗んで、かずくんとの未来を手にした形となった。やっぱり泥棒の才能があるのであった。でも、盗めなかったばあちゃんの運命もまた、幸せなものだったのがとても良かった。多分華も、かずくんと結ばれなくても幸せな運命があったのかもしれないけど、全ては選択だった。ばあちゃんの選んだ道も華の選んだ道も間違いではなかった。

 

  • 正体発覚が中盤だったから、「バレるかも?バレないかも?」ばかりじゃなかったおかげで中だるみがなかったんだろう。
  • オマージュが、くどいと思う絶妙なラインを攻めて入れられていて面白かった。製作陣が楽しんで作っているのが伝わってきた。(最終話のアルマゲドンにも笑った。) 
  • 詰め込みすぎを逆手に取られた。他のドラマだとくどいとか、あと一話増やせとか思うところが、全くなかった。特に最終回は全部盛り。

 

  • 1話で「なんじゃこのミュージカル」2話で「カラオケかよwwww」と言っていたのに5話あたりから完全に無いと震えが止まらない存在になっていたミュージカルパート。最後は歌で戦うマクロスぴちぴちピッチを想起させた。(そうか…?)敵のツッコミがど正論すぎる。(なんだお前!)(何歌ってんだよ!)その通りである。なんで歌ってんのかもわかんないし、なんで歌いながら戦う世界観を視聴者が受け入れているのかもわからない。これまでの話で丁寧に描いてきたからだろう。(丁寧に描くポイントのクセが強い!)

 

  • エミリはともかく、円城寺は本当に1ミリも悪いところがなかったので、切なかった。ただ人の心が変えられないだけで。

 

  • クランクアップの記事を読んだが、やっぱり小沢真珠が一番楽しんでいたようだった(笑)最終話、どう見てもやりすぎなのにえつこを肯定するパパ、愛である。

 

  • 個性的なキャラクターばかりの中で、ある意味誰にでもできるような、平凡で普通な正義漢役を、瀬戸康史で良かったと思わせる瀬戸康史の強さよ。

 

  • シリアスドラマだと勘違いしていたのはかずくんがバカじゃなくなったせい。

 

 

  • よくわからないポイントで正々堂々としている巌。

 

 

 

  • 渉が、世間的には弱者なのが良かった。栗原類の演技が普通にめっちゃよかった。

 

  • エミリとかずくんも、決して情がなかったわけじゃないから切なかったな。

 

 

 

 

 

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