つちや(仮)

大体当クールドラマ感想。たまに漫画、たまに旅、たまに雑談。

天国と地獄〜サイコな2人〜第10話感想〜愛とは罪を被ることか、意思を尊重することか〜

前回の感想

 

 

 

主観による評価

★★★★☆

 

「俺たちの戦いはこれからだ!」

壮大な愛の物語だった、と思う。

愛とは、エゴではなく相手の心を守ることだと伝わるドラマだった。

愛のドラマとはいえ、最後に「あなたを一番愛してる」「私もあなたが大切です」と抱き合って終わる恋愛ドラマでもない気がしていた。

言葉にすることが2人のゴールではないと勝手に思っていたから。

伝えたいという気持ちが2人にあるとも思えなかったし。

だから、拍子抜けするような終わり方にも見えたけど、「2人はこれからも関わり続ける運命」というシンプルな答えだけは確かに示されていたので、愛に限定されない人間関係のドラマとしてはスッキリしていてむしろ良かったなと思った。

2人が夜空を眺めてお互いを思い出すだけというのも寂しいし。

ギボムスも、新幹線のチケットが見つかるという「えっ?これで終わり?えっ?」と、ある意味ずっこけてしまいそうな終わり方だったので、森下先生の趣味なのかなと思う部分もある。

じめっとしてドラマティックな終わり方も好きだけど、ズッシリとこないけど日常をそのまま受け止めるような終わり方も、まだドラマの世界が続いてくれそうな感じがして、いいなと最近は思う。

 

それに、また入れ替わった2人の日常を想像するのも楽しいよね。

今度は信頼があるから、ドラマとは全然違う雰囲気になるんだろうな。うーん、見せて欲しい😂

変な意味ではなく、多分2人で暮らした方が辻褄を合わせて元に戻った後の生活を円滑に送れそう。

そして、とりあえず次の入れ替わりの日まで一緒に暮らして、その日あったことを共有して元に戻っても問題なく生活できるように心がけていたら、いざ元に戻ってもなんかそのまま一緒に暮らす…みたいな感じでずっと一緒にいるかもしれないよね。

望月のズボラさに日高が耐えられなくなるかもしれないけど。

↑この解釈素敵…。

入れ替わり慣れてて、一言目が「お勤め先どこです?」と冷静すぎて面白かったな。入れ替わり慣れるってなんやねん。

 

ちょっと失敗したのが、字幕をつけて見ていたせいで、最後の入れ替わりが字幕でわかってしまったこと。

演技で察したかったなあ。

 

 

2人の「守る人」たち

ハッピーエンドだと言い難いのは、陸が消えてしまったからだろうなあ。

自分の身を犠牲にしてまで「最後まで望月のことを思っていたのは日高」だと、陸はそう思って姿を消したんだろう。

敵わないからと身を引いた。

 

でも、果たして日高の方が望月のこと(東のことも)を思っていたと言えるんだろうか?

日高は東を庇い、東の意思に反して彼の名誉を守ろうとした。東は自分が殺人犯として裁かれることを望んでいたのに。

そして、守られたくもない望月のことも勝手に守ろうとした。

一方、陸は意思を守ることで東を守ろうとした。弟を守りたい気持ちを蔑ろにしなかった。

本当に望月の意思を尊重していたのは、SDカードを渡した陸なんだと思う。

2人とも、大切に思う2人が同じなんだけど、大切な人を悪者にしたくない日高と、大切な人の気持ちを大切にしたい陸で、行動が真逆になった。

望月の意思も師匠の意思も守ったのは陸だった。

でも、その陸が「敵わない」と思ってしまったから、もうこの終わり方しかなかったんだろう。

日高も陸も、守りたいのは間違っていないのに、「助けるために生まれてきた」とさえ思える人の前から姿を消して、一緒に生きられない道を選ぶ陸、すごいよ。

実際に全てを犠牲にして守る姿を目の当たりにして負けたと感じて、強くて飄々とした「彩子の中の陸」の姿のまま去るなんて、なんて男だよ。

日高を大切に思う望月の気持ちを尊重して、その上でそれをずっと見つめてはいられないからと姿を消す。陸だって望月を愛していたんだなあ。

陸の願いは望月の幸せだったけど、師匠の願いが日高の幸せだったことを忘れられなかった。

大切な人は何人いたっていいはずなのに、増えれば増えるだけ、全員の願いを叶えることは難しくなるんだなあ。

 

最終回を通して、日高の不器用なエゴが描かれていて、この人は第一話からずっと不器用なだけだったんだと思った。

賢いくせに守り方は不器用でエゴの塊。

サイコパスの笑顔必死に貼り付けて。

証言するまでも、きっと全てのピースを繋げる言い訳をずっと考えてたんだろうなあ。

 

守りたい、庇いたい。

望月が守られてばかりでは不満を抱く女ってこと、わからないわけではないだろうに、庇われた望月がどう思うかなんて無視したエゴの塊で、腹が立って愛しかった。

守りたい、守るのは自分だというエゴを持つ男の姿はとても良かった。

 

だからこそ、セク原に望月のことを「たかが女一人」と表現されて、証言を覆すわけにはいかなかったんだろうな。

たかが女一人ではなく、人生半分こした人だから。

セク原の説教も良かったけれど、セク原1人では証言を覆すには至れなかったところが面白い。

結局望月が怒らなければ日高には伝わらなかった。彼女の言葉が一番重かったのだ。

「私を守りたいと思うなら、私の正義を守らせて」

自分のためだと言うのなら、本当のことを言うべきだと自分で言える望月。

罰を受け入れる高潔さがあるからこそ、日高は望月を守りたかったんだろうな。

大人しく守られてなんてやるもんか。1人で地獄には行かせない。

この高潔さ、そりゃ警察学校向いてるよな。

正義を人に教える仕事なんだから。

再び入れ替わった日高は、きっと生徒を見て、望月が普段どんな指導をしているか想像して笑うんだろうなあ。

 

 

八巻・セク原について

八巻愛してるよ…。殺されなくてよかった………。

チワワを抱きしめる八巻も、ずんだパンケーキ楽しんでる八巻も愛しい。

そして、思っていたよりアホじゃなくて、辻褄を合わせる嘘の証言をしていたところも良かった。

口裏合わせずにみんなの言い訳が一致したところはちょっとご都合主義的だったけど、八巻が良かったのでOKです!

巻き込まれて警察学校に異動になるのも。

望月と悪いことしたのに同じところに異動させていいのか…?

 

日高が東を庇っていることも分かっていたし、望月が共犯ではない(協力者ではある)ことも分かっていた。

「やり方」一つで、悪役の行動に見えるのが面白かったな。

悪役ヅラしてることが主な原因だったけど。

この説教はすごく良かった。

セク原には嫌なところもたくさんある。

でも、社会的強者である日高にも望月にもきっと想像できない「痛み」を見ている人なんだとも思った。

強者が痛みを奪ってはいけない。声を奪ってはいけない。「犯罪者になりたくなければ嘘をつくな」という表面的な説教より、ずっと日高に刺さったと思う。

(ツメが甘くて「たかが女一人」と表現したことで日高の気持ちを一変させるに至らなかったけど。)

社会的弱者である兄が命を賭けて主張するために殺した、その叫びを奪う権利が社会的強者であるお前にあるのか?

お前がしたことにしていいのか?快楽殺人で終わらせていいのか?そうやって庇われることが本当に望みなのか?

兄が殺したことにしてやる方がいいんじゃないのか?それこそが兄のためだろう?兄の叫びを世界に届けることが弔いじゃないのか?

この、犯罪者の正義を犯罪者の正義として直視する考え方は、セク原にしかないだろうなあ。

ドラマの中では悪者だけど、彼もまた自分なりの警察としての矜持を持っていて、人間味のあるキャラクターで良かった。

 

そういえばこのドラマ、最後まで警察内部からスパイが出てこなくて良かった。

警察が信用できないとハラハラして、不信でストーリーに入り込めないんだよね。アンフェアやMOZUくらいになるともうそれ自体がエンタメになるんだけどさ(笑)

八巻は視聴者からは疑われていたけどただのアホだったし。

セク原は腹立つけど正義がある人だったし。まあ正義を台無しにするほどの性格と人相と手段の悪さだが。

 

 

最後に

冒頭、取調べで怒る望月は日高にそっくりで、理屈が似てきたんだなと思った。

フォロワーが、「日高になってた期間が彩子の正面突破しかしないようなやり方も変えた」と言っていたが、それが伝わってきた。

お互いのために変わってしまったという人間の感情の基本的な相互作用が胸を熱くした。

 

これ、本当に新鮮で面白かったと思う。

真実を探すドラマの最終回を、庇う人と、それに抗う人の攻防を描くことに費やす。

これは謎解きドラマじゃなくて、人と人との間にある複雑な感情を描くドラマだったんだなと思った。

 

謎解きドラマみたいに見えて、二人が出会ったことで、きっと出会わなければならなかった二人になってしまったという人間関係を描くドラマ。

3ヶ月、楽しかった!

本当に人間関係を楽しめる素敵なドラマをありがとうございました。

 

 

 

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