つちや(仮)

大体当クールドラマ感想。たまに漫画、たまに旅、たまに雑談。

MIU404第10話感想〜二人ならクズミを超せる〜

前回の感想

 

 

 

主観による評価

★★★★★

 

ルールを守らない悪い奴らに、ルールを守って立ち向かい戦う志摩と伊吹は本当に格好いい。

治安を守っても公務員だからと「叩いてもいい」と思われ、ルールを破る奴らに法を守らず対応すれば叩かれる。

警察は強くなんかない。

どうか最終話、彼らの弱い正義が勝ちますように。

キタネェ奴らにも筋通して勝つからかっこいいんじゃねーか?

(幽遊白書より)

 

 

痛みを伴う学び 加害の恐怖

野木先生は、視聴者を直接的な言葉で批判しない。

でも、ずっと心のどこか(もしくは一番広いところ)で、痛みを伴わないと視聴者は自分が加害に加担しうることを理解しないとわかっていたんだろう。

端的に言えば匿名で勝手なことを言う私のような人間に怒っていたんだと思う。

だから、その安直な加害性をどうやって私たちに伝えるかを模索していたのかもしれないと思った。無神経な視聴者に痛みを伴って学習させるにはどうしたらいいのか。

いろんな作品で少しずつテストして、MIU404第10話が集大成。

 

北川景子主演の「フェイクニュース」では、フェイクニュースに踊らされるドラマの中の人々をただ見つめるだけだった。でもそれだけでは行動は変わらなかった。

安易な拡散を否定する作品は沢山ある。漫画ではいくらでも見るし、ドラマでは3年A組が有名だろう。

これは完全に個人の感覚だが、私は3年A組のストレートに言葉で伝える最後のメッセージが苦手だった。直接的な言葉が響くぐらいなら最初からやらないし、この程度で改心する想定で描いたのかと批判的な気持ちだった。

だから、ネットで誹謗中傷が問題になるたびに、「3年A組でみんな学ばなかったの!?」と菅田将暉の画像つけたツイートが回ってくるのがとても苦手だった。

 

MIU404第10話は、これに対するアンチテーゼだったように感じた。

 

「ネットの使い方を考えろ!」という言葉によるメッセージを排除し、フェイクニュースがトレンドを席巻する様子を見せながら、まさに自分たちの手で「#MIU404」をトレンド入りさせる。

トレンド入りというのは、自分だけの力で起こることではない。大勢の人の力が要る。でもたしかにその中の一人として自分も加担している。

その様子を目の当たりにする痛み。

ニュース映像なんかで桔梗さんを断じるなんてバカだなと、「笑っていられる側」の人間だと思い込んでいるその最中に、自分も騙されていたと後から知る。情けなくて恥ずかしい。

箱の外にいると思ってたか?バーカ、箱の中だよって言われた気分。

 

私のような考えの足りない人間に学ばせるために自分の作品を使ったのも、現実でこれ以上の被害が出ないようにするためなのかな。

痛みを伴わないと学ばないけれど、学ぶために現実の誰かを傷つけない方法。そのために、フィクションの世界を使った。

これなら現実の人間は傷つかないから。

現実の人間を傷つけずに、「自分の指先が誰かを傷つける行為に加担する」恐怖と痛みを味わせるには、フィクションを利用するしかない。

言葉を使わず、「ほら、いつの間にか加担してると思うと怖いだろ?」と怯えさせることを選んだんだと思うと、感動もするし、怖いとも思った。

 

しかも、3年A組ではメッセージをそのまま伝えた菅田将暉に演じさせるんだから、えげつない。

香坂の回で、映像を盲信することを反省したのに、また繰り返す私も私だが。

 

 

クズミの知能

目的が、自分の影響力を誇示することでも、パニックになったSNSを見ることでもなく、たった一台のトラックを出発させることだったのが、不気味だと思った。

その目的さえ果たせれば、彼にとってあのパニックは手段の一部にすぎなかったのだ。


彼の目的はテロでもパニックを起こすことでもなく、ドーナツEPを流通させること。たったそれだけ。

ただそれだけのために、入念に操り人形(ナイトクローラー)を育て、フェイク映像を予め作り、パソコンを乗っ取った。

とにかく、ナイトクローラーを育てたのが、警察にバレたときのことを逆算してのことだったのが恐ろしいと思う。

クズミ自身の人脈で、一人一人に頼んで爆発映像を拡散してもらわなくても、たった一人を育て上げればあとはその周囲のちっぽけな人間たちが群がって拡散する。

クズミはSNSを使う者たちが衆愚であることをよくわかっていた。(身につまされた。)

そして、「俺の力でパニックになる群集を見るのが楽しい!」という小物感ある悪者じゃなく、あれだけのことをしてたった一台のトラックを動かしただけという目的意識の明確さが不気味だった。

どうしてあんなにドラッグを流通させたいのだろう。

来週明かされるのだろうか。

「理由なんかどうでもいい」となっても良いと思うけど。悪者に同情の余地がないという展開も好きだ。


とにかく頭のいい人間だなと思った。

人によって生い立ちのエピソードを変えるところから、人の警戒心を解くためなら嘘も厭わない軽薄な人間だと感じた。

だから、人の警戒心を緩めるための関西弁なのかな?と思った。

東京の人がどう思うか知らないけど、私は関西弁に限らず方言を丸出しにして喋る人間は、「標準語を使う=意識して使う=緊張がある」という状況の逆で、心を開いてくれていると感じている気がする。

クズミは、丁寧な標準語より、砕けた関西弁を武器にしているのではないだろうか。

もしクズミが全く関西出身じゃないとしたら、菅田将暉はネイティブ関西弁なのに、「非関西出身者の話すエセ関西弁」を話していることになる。怖いな。


それにしても、メケメケフェレットって何やねんと思ったけど、この世でたった一人調べた人=クズミがいるというところから、検索されたネットワークを調べる?(ごめん馬鹿だからわからない)のではないかと言っている人がいて、賢いなーと思った。

耳のいい伊吹なら覚えてると思うんだよね。

ああいう小さなところから事件解決の糸口を掴むような脚本を書く人だし。志摩が「何か覚えてることないか?お前の五感が頼りだ!」と聞いたらそれも胸熱。

あー、来週どうやって解決するんだろう。

 

 

伊吹と志摩

  • 二人の太陽と月のような対比
  • 影響され合う一方で、元々の特性も大事にする

最高のバディになっちゃってもーーーーーー!!!!!!!!

好きだ〜〜〜!!!!!!

 

特に、志摩が物事の「できない」面を見つめ、伊吹が「できる」面を見つめているという対比にはグッときた。

志摩にとっては「死んだ奴には勝て"ない"」でも、伊吹によって「(自分が)生きていれば何度でも勝負"できる"」に変身する。

希望を持って見つめると世界はこんなにも輝いて見えるんだと思った。

伊吹が性善説、志摩が性悪説をなんとなく信じているからなんだろうけど。

志摩はこうやって伊吹に少しずつ新しい世界の見方を教えてもらうんだろうな。

もしかすると、桔梗さんとの関係も頑張るかも…。うーん、片思い10年選手には厳しいかな…。

志摩が「かっこ悪い」と感じている自分を、伊吹は意気地なしじゃなくイケメンだと肯定するところもすごく良かった。少し揶揄っていたけどね(笑)

そもそも、振り向いてもらえないという弱音を吐けるようになったことがすごいよ。志摩は桔梗さんへの思いを「伊吹には吐き出せる」って考えているんだ。

 

個性を大事にしながらも影響されていく様子が本当に丁寧に描かれていていいなあ。

聴覚を生かす伊吹と、頭脳を生かす志摩。

冷静さを保って病院に向かうことを選んだ伊吹と、捜査方針に勘を交える志摩。

変わらないところと変わったところが間違いなくあるよね。

相手に合わせて自分の根幹を変えるようなことはしないけれど、たしかに相手の影響を受けて変わっていく。

志摩も伊吹も、そんな自分の変化が嫌いじゃないから受け入れてるんだろうなと思いたい。

 

 

九重と陣馬

本放送終わって2時間経って思うのは、九重が4機捜に残れていたら、好転スイッチになれていたかもしれないということ。

同時多発強盗も、青池透子のつぶったーの時系列も、何度も窮地を救った九重がいない、たった一度のその機会にここまでのことが起きてしまった。

 

きっと彼がいたら、陣馬さんを一人にはしなかっただろう。

一番助けになりたかった、今まで世話になった恩を返せるときに、彼は安全で守られた父親の部屋にいた。

思えば九重は今回、守るはずの警察という組織の中で守られる立場にある自分を突きつけられ続けていた。

優秀な志摩、自由な伊吹、頼りになる陣馬さん。戦い守る人たち。その中の誰とも同じ立場になれない。

スタート地点が違うことを今更理解する。温かい時間の中で誤認していたことを思い知らされる。

陣馬さんが九重を突き放したのは親心だろうけど、同じ立場で走っていたと思っていたのに突然突き放されるのは辛かっただろうなあ。

そしてぬくぬくすることを選ばずに外へ飛び出そうとしたガッツは、陣馬さんから受け継いだものな気がする。第1話から抱えていたとは思えないよ!

直談判しにいくほど4機捜にいたいと思っているところはすごく嬉しくなった。

「恵まれている」という言葉には、生まれた環境だけでなく、鍛えられた環境=401も含まれるんだろう。

陣馬さんに出会わなければ、成川を捕まえられなかったことをいつまでも認められなかっただろう。

九重の4機捜での経験が、彼を成長させるものでよかった。心を折るものじゃなくてよかった。

 

しがらみにうんざりするだろうけど、上に行けない人たちのために、すばらしい上層部になってほしい。今の気持ちを忘れずに。

(マメジも可愛げがあって嫌いじゃないけどね。)

 

 

志摩と桔梗

明確な描写もないのに騒いじゃだめだと思っていた1,2話、

「子供がいるならラブじゃないなんて言ったか?」という視線が美しい3話

普段好意を表に出さないからこそ好きな理由が気になった5話(※マジで妄想です)、

ハムちゃんにマウントとられた6話

そして共同推理の9話…。

それら全てを経た今を見る贅沢な時間…。

 

は〜〜〜〜。

報われて欲しい気持ちと、報われない気持ちを抱える志摩が見続けたいという気持ちがどちらもあって苦しい。

 

報われないとわかっていてマイちゃんにアタックする伊吹を理解できない志摩、多分女に苦労したことがないんだと思ってる。(※偏見)

だから、プライドでがんじがらめになって、目の前で泣かれても下手な言葉がかけられない。(伸びても美味しいというのは、伸びるまで泣いてていいよってことではあるだろうけど。不器用か?)

産休に入ってから知った自分が情けないのもあるかな。このエピソード哀れすぎてどうしたらいいのか分からなくなった。

 

でも、志摩は自分が「可愛い顔を見せてもらえない」存在であることを6話でハムちゃんに言われて自覚してしまったけれど、多分桔梗さんはハムちゃんに泣き顔を見せられないと思った。

志摩が、叶わない思いを伊吹には言えるように、桔梗さんにとっても、弱音を吐ける相手と吐けない相手がいる。

それは、ちょっとだけ喜んでいいと思う。

多分伊吹の前では泣かないと思うんだよなあ。

あと、志摩が泣き顔に驚いていないところから、泣き顔見たの初めてじゃないんだろうなと思った。

よく考えれば、捜一の頃から、男社会で何度も悔しい目に遭ってきたはずなのだ。その度、志摩に愚痴を聞いてもらっていたんだろう。(そんな美味しいポジションでも勇気が出せず産休までプライベートを教えてもらえなかった志摩…。)

 

でも、どちらの顔も見られる人がこの世にたった一人いた。

それが志摩のライバル・元旦那だなんて、そりゃ「敵わない」って思うよね…。

伊吹が優しく「大丈夫、可能性あるよ」と言うのではなく、「生きてれば勝負できる」って考えで図らずも背中を押すことになったのがまた胸熱。

 

まあ、死んだ元旦那に全く勝てないなんてことないと思うんだけどね。

死んだ人は、永遠に美化されるから、桔梗さんの中でもどんどん美しい思い出になっていると思う。

でも、フィクションが好きな人ならどこかで見た展開だと思うけど、死んだ人への思いごとその人を愛するということが、生きた人間にはできる。めぞん一刻のことです。

死んだ人間はもう勝負できないけれど、生きていればその選択をすることができる。

行動を変えられるのは、生きた人間の特権だから。

 

放送前の妄想。

 

 

その他

踊る大捜査線じゃん。

和久さんと室井さんみたいだった…。

あと、定年退職したらうどん屋さんってのも唐揚げ屋さんを思い出した…。

 

申し訳なく感じるのが失礼だと考えているハムちゃん好きすぎる。

 

公式サイトの次回予告、あれなに?死んだの?勘弁してくれよあと1話なのに。

でももし死ぬのだとしたら、人の死というのは突然起こるもので、そこにドラマなんてないという警察ならではの時間の流れが描かれるのかなあ。

 

 

追記:警察は不甲斐なくなんかない!

YouTubeの動画を見て慌てて、テレビを確認しないのはなんで?と思って、

こんな感じのことを呟いたら、色々な考えが集まった。

 

この辺の意見がきて、自分がどこを誤解して、ドラマで描かれたのは何だったのかじわじわ理解できた。

  • 私が勘違いしてモヤモヤしたこと→ネットを一次資料にしたこと…今までそうじゃなかったのに、ネットを盲信する、展開に都合のいい「無能な警察」にされたのでは?というモヤモヤ
  • 私が見落としていたこと→そもそも↑と同時に大量の110通報がきていたこと

→つまり警察は展開に都合のいいネットを盲信する組織にされたのではなく、通報を信じる組織だった。

伊吹の第1話の「最悪の事態になる前に止められる」という思想通りの行動だった。

よくよく考えると、フェイクの可能性があろうと、どうせフェイクだろと現地を見に行かずに終わらせることはできない。クズミは凶悪な犯罪者だから。

騙されていてほしくなかったから疑問に思っていたけれど、騙されたのではなく何があっても嘘扱いせずに行動することがお仕事なんだよね。

さらに、ここできた引用リツイートでなるほどと思った。

それだ〜!!!!と思った。

第3話で毛利さんが、「通報があれば駆けつけるし、助けもしますよ」と言った。どんなクソ悪ガキでもそれが警察の仕事だから。

警察の大原則を、毛利さんたちも、今回の機捜も守っただけだったんだなあ。

 

不躾でも疑問は呟いてみるもんだな〜と思った。

 

 

忘れられないツイートたち

 

 

 

実況中のツイート